リハビリ病院で患者さんの回復をサポートする専門家チームについて

リハビリ病院(回復期リハビリテーション病院)では、さまざまな障害を持つ患者さんが、1日でも早く通常の生活に復帰できるよう、各関連分野の専門家がチームを形成してサポートに当たっています。この記事では、医師や理学療法士を中心としたこのチームで働く専門家について、その役割をご紹介します。

リハビリ病院の専門家チーム

リハビリ病院(回復期リハビリテーション病院)では、さまざまな障害を持つ患者さんたちが、日々、日常生活に戻れるようリハビリに励んでいます。リハビリに励む患者さんや、その家族を支えているのが、関連する分野における専門的な知識や技術を持つ専門家たちです。医師や看護師のほか、理学療法士や作業療法士、看護補助者など、多くのスタッフが一人の患者さんに関わり、チームとして連携して患者さんの快適な日常生活への復帰を後押ししています。

リハビリ病院でのリハビリを支えているチームのメンバーは、多くの場合「医師」「看護師」「栄養士」「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」「看護補助者」「医療ソーシャルワーカー」「薬剤師」という9分野のスペシャリストです。もちろん、病院によってはこの限りではない場合もありますし、施設の大小によってもメンバーは異なります。しかしこの記事では、基本的なリハビリチームの構成として、以上9分野のスペシャリストの役割についてご紹介していきます。

リハビリ病院の医師

リハビリ病院で働く専門家チームをまとめているのは医師です。患者さんの状態を診察により把握し、治療の方法を考え、提案します。患者さんの症状や容態が急変するなどの緊急時には、他の診療科や病院の医師とも連携し、必要であれば急性期病院への紹介も行います。

リハビリ病院で働く医師は、通常の病院の医師と同じように診断し治療します。しかし、リハビリ病院の医師にはその先の仕事があります。それはリハビリという、患者さんにとってはある種の戦いに介入し、支えることです。リハビリは患者さんの努力無しには成し遂げられないことなので、チームとしてサポートします。その指揮を執るのが医師です。看護師や栄養士、理学療法士などから成るチーム全員が一人の患者さんの情報を共有し、患者さんやその家族の希望を把握し、退院後の生活を描いてリハビリメニューを組み立てる。これを繰り返し、常に患者さんにとってのベストを追及することが、リハビリ病院の医師の務めです。

リハビリ病院の看護師

リハビリ病院の看護師は、医師の診療をサポートするほか、患者さんが療養生活を送る上での精神面のサポートなどを行います。リハビリ病院での入院生活は、快適な日常生活に復帰するための準備。入院生活そのものがリハビリとも言えます。医師や他のチームスタッフと情報を共有するためのミーティングにも出席。患者さんの薬内服の確認、食堂への誘導や介助、歯磨き、着替えなどのチェックと看護記録の記入などを行います。昼と夜のシフトで仕事の内容は異なりますが、緊急事態が起こることは比較的少ないので、シフトどおりに仕事が終了する場合が多いようです。

リハビリ病院の栄養士

リハビリ病院で働く栄養士は、バランスのとれた食事を患者さんに提供することで入院生活のサポートをします。患者さんは、それぞれ障害の状態も健康状態も違います。そのため、それぞれの患者さんに適した食材を選び、メニューを考案します。その際、病院外の厨房スタッフとの打ち合わせも大切なプロセスの一つです。食事の時間に病棟を巡回し、患者さんに食事の感想や意見を求めるのも栄養士の仕事。飲み込みに問題を抱えている患者さんの場合は、特に医師や看護師、言語聴覚士との連携も大切な仕事になります。患者さんやご家族への、退院後を見据えた栄養指導も、リハビリ病院で働く栄養士の大切な仕事です。

リハビリ病院の理学療法士

理学療法士は、リハビリ病院などで働く医療従事者です。作業療法士や言語療法士と共に、リハビリテーション専門職と呼ばれる国家資格です。事故や病気により障害を抱えている患者さんに対し、機能を回復する目的を持って医師の指導の下、理学療法を行います。理学療法は、立ち上がる、起き上がる、歩くなどの動作を回復するための訓練です。トレーニングマシンを使う筋力トレーニング、赤外線や電気刺激を使う療法なども行います。

また、理学療法士は、トレーニングに関して看護師や作業療法士と強調して仕事を行います。看護師にトレーニングの補助のやり方を指導する、特定の患者さんのリハビリプログラムに関連性を持たせるため作業療法士と打ち合わせを行うことなども、理学療法士の仕事です。

リハビリ病院の作業療法士

リハビリ病院で働く作業療法士は、身体や精神になんらかの障害を抱えている患者さんが、日常生活に戻るための基本的な動作、たとえば「入浴」「着替え」などを、病院内での仕事や遊びなどの作業により回復することを狙いにしています。作業療法士は、リハビリの内容について理学療法士など、他のリハビリ専門職と協議の上、適切なメニューを考案することもあります。作業療法士と理学療法士は、時折、混同されることもありますが、作業療法士はさまざまなバリエーションがある作業の中で、機能を複合的に取り戻し、理学療法士は反復運動により機能を取り戻す、という違いがあります。

リハビリ病院の言語聴覚士

リハビリ病院で働く言語聴覚士は、理学療法士、作業療法士と共にリハビリテーション専門職と呼ばれる職業です。言語のほか、聴覚や音声、認知、そして摂食・嚥下といった障害に関わる専門家です。専門の性格上、歯科医師や歯科衛生士、栄養士と連携、協力することが多くなります。言語聴覚士は不足していて、今後の需要増も見込まれることから、人材育成が大きな課題になっています。

リハビリ病院の看護補助者

リハビリ病院で働く看護補助者は、患者さんの入院生活そのものをダイレクトにサポートするプロフェッショナルです。食事から入浴、排泄のサポートまで、介護全般を行います。退院後の自宅復帰を見据え、家族に対して介護や介助に関する知識やアドバイスをすることも、看護補助者の役割の一つです。

リハビリ病院の医療ソーシャルワーカー

リハビリ病院で働く医療ソーシャルワーカーは、患者さんが入院中も安心して治療やリハビリに集中できるように、医師を筆頭にした各分野のプロフェッショナル、そして家族と連携して、主に手続き関連のサポートを行います。患者さんの将来を見据えたサービス、社会福祉制度の紹介、保険などの手続きサポート、施設の紹介、介護人材の紹介や手配など、患者さんや家族にとってわかりにくいことをサポートする心強い存在です。

リハビリ病院の薬剤師

リハビリ病院で働く薬剤師は、医師と密接に連携して、薬の継続や変更などの調整を行います。また、調剤も薬剤師の仕事。量や副作用、飲み合わせを考慮して適切に調剤します。患者さんの自宅復帰を見据えた服薬も、看護補助者などと連携することで、適切なサポートを提供します。

退院後を見据えたリハビリ病院のサポート

リハビリ病院では、各分野においてすぐれた知識と技術を持つプロフェッショナルにより構成されたチームが、患者さんとその家族をトータルでケアします。リハビリは、患者さんの努力無くして結果を出すことが難しいものではありますが、常に患者さんの状態をチーム全体が共有し、退院後を見据えベストな選択をとり続ける。この方法で、チーム一丸、快適な日常生活を取り戻すためのサポートを提供します。